汐留駅から徒歩5分ほどの場所に、東京にいながら自然を感じられる公園があります。国の特別名勝及び特別史跡に指定されている「浜離宮恩賜庭園」です。
浜離宮恩賜庭園は、江戸時代に徳川将軍家の別邸で、鷹狩場として使われいた場所。明治には皇室の離宮となりますが、震災や戦災で損傷した後、昭和20(1945)年に東京都に下賜され、整備後「浜離宮恩賜庭園」として一般に公開されました。
2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、園内では施設の改修や復元工事が進んでいます。
6月のある日、江戸時代の姿が蘇りつつある「浜離宮恩賜庭園」で、将軍たちの時間に思いを馳せ、散策を楽しみました。
出入口は汐留駅に近い「大手門」と、浜松町駅にも近い「中の御門」があります。今回は大手門から入園しました。
入るとすぐ、宝永6(1709)年に6代将軍徳川家宣が庭園を改修した際、植えたといわれる、小山のような「三百年の松」が鎮座していました。
都内では最大級の黒松だそうで、張り出した枝は、たくさんの支柱に支えられています。
南へ向かうと、明治期の日本初の西洋風石造建築物「旧延遼館」の跡地があります。
今後、「旧延遼館」は復元計画もあるそうですが、今は「ハナショウブ」が、近くで花弁を広げていました。
集会施設として有料で利用できる「芳梅亭」を過ぎて南へ向かうと、都内では唯一海水を利用している「潮入の池」です。
この池に面して、復元された3つの「御茶屋」が建っています。
潮入の池の北東側にある「松の御茶屋」は、平成22(2010)年に復元されました。鷹狩場において御茶屋は、賓客をもてなす場でもあったそうです。
「燕の御茶屋」は、平成27(2015)年に復元されました。室内には入ることでできませんが、内部は外からも見ることができます。
「松の御茶屋」と同様に、11代将軍家斉の時代の創建で、戦火で焼失しましたが、発掘調査による礎石や古い図面などの史料により、当時の姿が再現されました。
名称はについては、燕型の釘隠(くぎかくし)金具が使われていたことに由来するという説もあるそうです。
そして、平成30(2018)年3月に復元が完成したのが、立派な茅葺き屋根の「鷹の御茶屋」です。
第11代将軍徳川家斉の時代に建てられた当時は、「御見合所」「わらぶき御亭」と呼ばれたそうで、内部は鷹狩の合間に野支度でも立ち寄れるよう、広い土間になっています。
建物の裏には、鷹が待機する「鷹部屋」もあり、土間にある炉では芋や栗を焼いたりと、こちらでは田舎の風情を楽しんでいたようです。
明治に入り接客が目的の施設になると「鷹の御茶屋」と呼ばれるようになりました。
「鷹の御茶屋」は時間帯により内部が見学でき、「御茶屋ガイドツアー」もあるので、鷹狩や御茶屋の建築について詳しく知りたいかたにはおすすめです。
桜が終わる頃の浜離宮恩賜庭園は、藤棚が見事です。藤の花の下を通り、総檜造りの「お伝い橋」を渡ると、池の中にあるのが「中島の御茶屋」です。
昭和58(1707)年に再建された「中島の御茶屋」は、平成27(2015)年に英国王室のウィリアム王子が初来日の際、おもてなしの場となったことでも有名です。
こちらでは、お菓子とお抹茶(有料)をいただくことができますが、土日は混雑するので、静かな時間を楽しむには平日がよいでしょう。
浜離宮恩賜庭園は藤棚も見所ですが、ソメイヨシノのあとの、絢爛豪華な八重桜がおすすめです。
こちらは花弁が緑の「鬱金(うこん)」という八重桜ですが、ほかにも御衣黄、駿河台匂、一葉など、名前も色形もさまざま。
ソメイヨシノが終わると人出も少なくなるので、のんびりお花見が楽しめます。
周囲を水に囲まれていて、東京湾も目の前です。勝どき橋や行き交う船を見ながら、物思いにふけるのもいいですね〜。
浅草やお台場へ行く水上バスの発着所がある汐留川付近は、梅林やボタン園もあり、広い菜の花畑は、インスタスポットとしても人気!
江戸時代の姿が戻りつつある「浜離宮恩賜庭園」は、外国人観光客で賑わう観光スポットでもあります。
汐留という高層ビルが立ち並ぶビジネス街を背にしながらも、行くたびに日本文化や、動植物たちに、新たな発見のある歴史ある庭園です。
- 入園料:一般300円
- 開演時間:9:00~17:00
- 休園日:年末・年始(12月29日~翌年1月1日まで)
- アクセス:
〈大手門口〉都営大江戸線「汐留」「築地市場」ゆりかもめ「汐留」徒歩7分、
〈中の御門口〉都営大江戸線「汐留」「築地市場」ゆりかもめ「汐留」徒歩5分、JR山手線・京浜東北線「浜松町」徒歩15分 - URL:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index028.html