キレイな紫陽花があると聞き、墨田区の「向島百花園」を訪ねました。
「向島百花園」は、町人文化の栄えた江戸時代の文化元年(1804年)、骨董商を営む佐原鞠塢(さはらきくう)が、交遊のあった人々の協力を得て開園した、現代に残る江戸時代の花園です。
中国や日本の古典文学に登場する植物が集められ、四季を通じてさまざまな花が園内を彩ります。昭和13年(1938年)には東京市に寄付され、「都立文化財9庭園」のひとつにもなっています。
入園すると、庭門がありました。
右の門柱には「春夏秋冬花不断」、左には「東西南北客争来」と詩人 大窪詩仙による木板がかけられ、開園当時の賑わいが伝わってくるようです。
庭園でまず目についたのが、赤やピンクの「ナデシコ」でした。
この辺りは、秋の七草が植えられているそうですが、向島百花園では、春の七草、秋の七草が栽培され、春の七草は皇室に献上されているのだそうです。
ナデシコの奥は、藤、葛、ミツバアケビと、つる系植物の棚、そしてあずまやがありました。
藤の花はもう終わっていましたが、8月になると葛の花が甘い香りを放ち、10月にはミツバアケビが薄紫の実をつけるのだそうです。
葛棚の下に腰かけ、ぜひ花の香りを楽しんでみたいですね。
南へ進むと、園内一の見どころ、「ハギのトンネル」です!
9月下旬には、全長30mの竹のトンネルがハギの花に包まれます。訪れたのは6月ですが、気の早い花が咲いていました。
ハギのトンネルを抜けると、左手には池が。
ほとりにお目当ての紫陽花、「すみだのはなび」を見つけました。
隅田川花火の様子から名づけられたという花は、夜空を舞いながら散っていく花火のようで、可憐な美しさでした。こちらの藤棚の下にもベンチがあるので、水辺を前にほっとできるスポットです。
すぐ近くには、凛とした花菖蒲も咲いていました。池のほとりには、ほかにもさまざまな紫陽花が植えられ、風情のある名前も素敵でした。
-くろひめ-
-きよすみさわ-
-しずか-
池の東側の道を進むと、突き当たりは「桑の茶屋跡」です。明治時代の上野の博覧会で使われた、桑の木の建物があった場所です。
ここは東京スカイツリーを拝める、絶景のインスタ映えスポットでもあります!
出入口近くに戻ると、江戸時代に旧臼杵藩藩主のために建てられた「御成屋敷」が残っています。
明治時代には役所庁舎として使われたこともあったそうですが、縁側に囲まれた木造の屋敷はとても趣がありました。座敷は予約すれば、有料で集まりや食事などに利用できます。
この日は梅雨前の晴れ間でとても暑く、「茶亭さはら」で一休み。地元墨田区のトーキョーサイダーで、乾いたノドを潤しました。
江戸時代、梅が見事な亀戸天神は「梅屋敷」と呼ばれていましたが、それに対し向島百花園は「新梅屋敷」とも「花屋敷」とも呼ばれていたそうです。
サロン的な存在でもあった「百花園」、「梅は百花にさきがけて咲く」と絵師の酒井抱一が名付けたといわれています。
文人墨客らの句碑や、日本橋の石柱など、園内には30近い石碑が残されています。
松尾芭蕉の「こんにゃくのさしみもすこし 梅の花」の句碑の側には、クチナシの花が甘い香りを漂わせていました。
下町情緒の残る街、東向島にある向島百花園は、大名庭園にはない、さり気ない風情が魅力です。
春は梅、そして桜。
5月には藤棚から花房がさがり、秋にはハギのトンネルと、まだまだ見てみたい景色がたくさん。庭門近くには、写真つきの季節の花の案内板があるので、それを頼りにまた散策を楽しみたいものです。
旅データ
- 料金:一般150円
- アクセス:東武スカイツリーライン「東向島」から徒歩約8分、京成電鉄押上線「京成曳舟」から徒歩約13分
- URL:https://www.tokyo-park.or.jp/…