寺社

【港区】徳川家康公の還暦のお姿をご神像とする「芝東照宮」

昭和通りに面した芝公園と増上寺のならびに、「芝東照宮」はあります。

東照宮とは東照宮大権現、すなわち徳川家康公を祀った神社のこと。全国には数多くの東照宮がありますが、芝東照宮は、日光・上野・久能山とならび四大東照宮のひとつといわれています。

鳥居

アクセスは都営三田線の芝公園駅が最寄り駅で、都営地下鉄浅草線・大江戸線の大門駅からは徒歩7~8分、JR浜松駅からも10分ほどです。

葵の御紋の提灯

江戸時代に造られたという凛々しい狛犬のお出迎えをうけ、石の鳥居をくぐり石段を上がると、両脇に徳川家の葵の御紋の提灯が掲げられています。

梅

訪れたのは2月初旬。緑に囲まれた境内では梅がほころびはじめていました。

お隣の増上寺は徳川家の菩提寺として有名。芝東照宮は神社なのにやはり家康公をお祀りしているの?と思われるでしょうが、これには歴史の由縁があるのです。

天正18(1590)年に江戸入府した徳川家康は、源誉存応(げんよぞんのう)という僧侶との出会いから、増上寺を菩提寺と定めます。

還暦の記念には、自らの像を「寿像(じゅぞう)」として刻ませ、駿府城に祀っていました。

元和2(1616)年、家康公は75歳で亡くなりますが、「像を増上寺に鎮座させ、永世国家を守護なさん」という自らの遺言により「寿像」は芝の増上寺に祀られました。

社殿

この「廟(びょう)」は、家康公の法名「一品大相国安国院殿徳蓮社崇誉道和大居士」より「安国殿」と名付けられましたが、のちに安国殿は、明治初期の神仏分離のため増上寺から分かれ、「芝東照宮」として寿像が本殿に祀られます。

社殿は寛永18(1633)年に建て替えられたものが、昭和20(1945)年の戦火により焼失。

現在は戦火を免れた寿像と寛永1(1641)年の安国殿の再建に際して、三代将軍家光公が植えたと伝えられる天然記念物の公孫樹(いちょう)が残っています。

拝殿

のちの昭和38(1963)年、寿像は東京都重要文化財に指定され、現在の神殿は復興奉賛会により昭和44(1964)年に建立されました。

ご神像は年に一度、家康公の命日である4月17日の午前中のみ、ご開帳になります。

当日は例大祭も行われ、伊勢音頭保存会の奉納踊りや、特設野点席でのお茶会が開かれるそうです。

境内に1本ある、黄緑色の花の八重桜・御衣黄(ぎょいこう)もちょうど見頃の頃。還暦の家康公のお姿を拝見しに、ぜひ訪れてみてください(家康公の寿像の複製が東京江戸博物館に所蔵されています)!

いちょう

空襲をのがれたイチョウの木は、400年近い時を経て、現在は高さ約21.5m、目の高さの幹の周囲は約6.5m、根元の周囲は約8.3mの巨木に成長しました。

冬場は老木らしい姿ですが、葉が茂る季節はエネルギーに溢れ、刃池に見える東京タワーの赤とのコントラストも見ものです。

芝東照宮の境内には、1月中旬頃から梅の花が咲き始めますが、白、紅、そして薄紅色の花は、社殿の緑青の屋根に映え、そのかわいらしさが一層目を引きます。

梅

そのかわいらしさに凍える頬もほころんでしまいますね。

オリーブの木

境内にはたくさんのオリーブの木も植えられています。

オリーブの木

平成26年(2014)年の「東照宮四百年式年大祭」の際、15本が記念植樹されました。

オリーブは「平和の象徴」といわれますが、徳川家康公が国を治め、泰平の世をもたらしたことにちなみ、オリーブの木が選ばれたのです。

句碑

手水舎の手前には、2つの句碑が建てられています。

以前、高浜虚子のひ孫で、やはり俳人であり俳誌「玉藻」を主宰していた高野高士が、芝東照宮で句会を開いていたそうで、当時詠まれた句が石碑に残されています。

早春らしい句を見つけました。

「歳月は美しきかな梅ひらく」酒井郁子

手水舎で手を清めて拝殿したあとは、社務所に立ち寄りましょう。

社務所

芝東照宮ならではのめずらしいお守りが並んでいます。

お守り

一番人気があるのが、「完走守」(左)です!(初穂料500円)

「東京マラソン」のコースは芝東照宮の目の前を通るので、参加するランナーはもちろん、マラソン愛好家や「目標を達成したい!」という方にとても人気があるそうですよ!

「花ひらく さくら みくじ」(右)は、花びらを開くと結果が分かるというロマンチックでドキドキなおみくじです。

御朱印

最近は御朱印を集める方が多いですが、芝東照宮の御朱印は家康公をお祀りしているだけあって、徳川家の葵の御紋が押されています(初穂料500円)。

御朱印といっしょに、日光杉並木の古材で作られた「芝東照宮道中安寧守」をいただけます。旅行の時にバッグに入れていけば、道中安全ですね!

ねずみのお守り

子年の筆者は、かわいさに惹かれて陶器のねずみのお守り(初穂料200円)もいただいたのですが、さっそく失せ物が見つかるというご利益がありました!!

周囲を芝公園に囲まれた芝東照宮、梅が終われば桜、秋には大銀杏の紅葉と、一年を通じで見どころにあふれています。ぜひ季節ごとに足を運んでください。